風力発電と野鳥

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北海道を歩いているとき、巨大な風力発電用風車が林立している風景を何度も見てきた。
地球温室効果ガスと言われているCO2を排出しないクリーンなエネルギー。
未来型の発電装置として、頼もしく眺めながら歩いて来た。
しかし、その頼もしい発電施設も手放しで喜んではいられないということが、今月号の日本野鳥の会の会誌「野鳥」の特集記事に載っていた。

宗谷岬の風車群
表紙の羽がち切れて墜落していくワシの絵を見て妻が言った。
「あの風力発電で野鳥が犠牲になっているんやのぉ~」

風力発電機の風車の羽(ブレード)は一見ゆっくり回転しているように見えるが、近くで見るとその外周の速度は大変なものだ。
シュ~ン、シュ~ンと大きな音で風を切って回転している。
鳥が衝突したらひとたまりもないことは容易に想像できる。

北海道オトンルイ発電所
しかし、鳥は機敏な野生の生き物だから大きな風切り音をたてて高速で飛んで来るブレードに近づくことはないだろうと、安易に考えていたが、そうではないらしい。
右2枚目の画像は北海道天塩海岸に28基もの風車が一列に並んだ壮観な眺めのオトンルイ風力発電所だが、ここの解説板によると、翼の直径は50.5m、タワーの高さは74mとなっている。
もし、2秒間に1回転したとすると翼の外周速度は285km/時 以上で新幹線並だ。3秒間に1回転でも190km/時 以上だから鳥の速度を遥かに超えている。

北海道更喜苫内(サラキトマナイ)
人間を含めすべての生き物は飛行機や新幹線、車、風力発電などがなかった時代に進化してきたのだから、最速の動物の動きを認識できれば充分だったはずだ。
それ以上の速度で動く物は認識できなくても生存できたはずで、ここに来て急に今まで存在しなかった高速のものが出現しても対処できないのは無理もない。
ある速度以上のものが見えなくなってしまう現象をモーションスミアと言うらしい。
網膜がその速度の動きに対応できなくなる現象で、人間にもあるらしい。
車の運転でも速度が速くなると視界は中心部だけの狭い範囲になり周辺は見えなくなるというから、同じようなものかもしれない。

北海道苫前町
と、いうことで、野鳥の衝突事故が世界各地で問題になっているらしい。
以下は野鳥の会の「野鳥」の記事を要約したものである。
アメリカ西海岸のカリフォルニア州アルタモント峠は湾と渓谷を渡ってくる風が非常に強く、165k㎡のエリアに5400基もの風車があり、36億kw/hの新エネルギーを供給しているそうである。
ここで1998年から2003年までの5年間調査してきたショーン・スモールウッド Dr. によると1200件もの死亡事故があったと言う。
イヌワシ、アカオノスリ、アメリカチョウゲンボウ、アナホリフクロウ、などの猛禽類がよく衝突死しているそうだ。

北海道苫前町
そのために風車を危険な設置場所から比較的安全と思われる場所に移動したり、80基ほどの風車が運転停止になっているそうだが、その数はまだまだ少ないと言う。
また、アルタモント峠では11月から2月の4ヶ月間を運転停止にすれば、あまり出力を失わずにかなりの死亡率を低減できることも分かってきたそうである。
その他、現在のプロペラ型の羽ではなく、垂直の行燈型の風車も研究されているようで、これなら事故率を劇的に減らすことも可能であるという。

人間のやることは、一つ良いことをすると、別の面で必ず悪い面があるものである。
地球温暖化のために人間のみならず他の動物や野鳥もかなりの影響を受けている。
その温暖化防止対策の影で多くの野鳥が直接的に犠牲になっている事実を、私は今まで全く知らなかった。
データ
  • 2007.04.01(日)
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